フォーミュラチキンレース

 カードゲームの類からしばらく離れていると、ふと気づく。トランプやウノで遊んでいる時、無意識のうちに捨て札をかき集め、山札を延々と切り続けてしまうのである。身体が、デッキをシャッフルしたくて仕方ないらしい。
 

STBL*20+20+...=100くらい 1 2

 2《シューティング・スター・ドラゴン》 Ultra
 1《シューティング・スター・ドラゴン》 Ultimate
 1《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》 Ultra
 2《スクラップ・ツイン・ドラゴン》 Ultra
 2《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》 Ultra
 2《覇魔導士アーカナイト・マジシャン》 Ultimate
 4《闇帝ディルグ》 Super
 3《パワー・ブレイカー》 Super
 3《破戒僧 ランシン》 Super
 4《異次元グランド》 Super
 1《ワイトメア》 N-Rare
 1《馬の骨の対価》 N-Rare
 2《落とし大穴》 N-Rare

 
 僕はかつて、なにやらあやしい会合に身を置き、友人たちと共にカードゲームをプレイする日々を送っていた。のだが、環境の変化とともにその会合は活動を止め、僕も静かに夢とカードの詰まったせんべい缶の蓋を閉めた。
 
 がしかし。引き続きカードゲームの世界に身を置いていた旧友たち。そのフォロワーをフォローしていくごとに、タイムラインのTCGクラスタ濃度は上がり、その数多のツイートにより感化された僕はまた、この世界に戻ることにしたのである。
 
 その矢先、新潟で行われる遊戯王クラスタオフに誘われた。えてしてその日がOCG復帰戦になるだろう。まだ見ぬ最近のカードリストを眺め、久々のデッキ構築をはじめた。
 
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 
 翌日にオフを控えた2月10日。僕はその高価さから、無意識のうちに脳内構築環境から除外していた一枚のカードが、どうしても必要なことに気づく。
 
 通販やオークションでは間に合わない。近所の―といっても電車でようやく行ける距離なのだが―シングルカードを販売する店に問い合わせたが、在庫の確認は出来ないようだ。直接店に赴き確認しにいくべきか?いやその電車賃で引けるかもしれない。
 
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 
 
 VSスターストライクブラスト−フォーミュラチキンレース
 
 
 数時間後、駅前の家電量販店にて。1パック135円と良心的。
 
 前に遊戯王をやっていた頃は、人間力(※)が低かったらしく、パック引きに対する自信があまりなかったので、シングル買いが主であった。
 
 ※人間力とは、主に『運』と呼ばれるものであり、その人の人としての勢い!といった感じの意味あい。構築、プレイングの次あるいはそれと同等に重要な要素である。学校をサボったり、悪いことをすると低下すると言われている。
 
 まあでも、何年も昔の話。一枚引ければそれでいい。欲を言えば二枚欲しいけど。
 
 開封
 
 
 
 
 
 速攻でダブるレリーフの覇ーカナイト。
 
 
 数少ないなんか使えそうなノーマル、《スクリーン・オブ・レッド》などを見る度、少し癒されたものの、手持ちのデッキ全てに3積み出来るようになるまでさほど時間はかからなかった。
 
 
 噂のディルグランシン。
 
 
 《パワー・ブレイカー》や《異次元グランド》もダブりはじめる。改めてリストを見直すが、このパック、スーレアは確かに7種類。
 
 
 
 
 
 もしかしたら引けないのだろうか?
 すでに二箱分は開けただろうか。後にも先にもこんなに一度にパックを開けたことはない。
 
 僕は焦っていた。久々のデュエルだ。最高に仕上がったデッキで戦いたい。そのための最後の1ピース。
 
 多少未完成でもいいではないか。それに、これ以上は明日のオフどころかそれ以降の生活に響く。
 そんな弱気な言葉が脳裏をよぎる。
 
 しかしこんな無惨な釣果で帰りたくない。何よりつらいのが、"実践級のカードが一枚もない"という事実。スーレアを下から数えて4種類しか引いていない。
 
 
 
 弱気でも何でもない至極真っ当な思考が辛うじて勝り、僕は家路に就いた。
 
 紙束だ。誰が、コンマイがなんと言おうと紙束としか言いようがない。札束で紙束を買ったのだ。
 一枚引ければ救われるのに。救われる?一枚引ければ・・・
 
 
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 
 
 一時間後の午後8時過ぎ。
 
 
 
 パックを買い、引いたカードからデッキを組む者。
 予め作ったリストに従ってカードを揃え、デッキを組む者。
 
 カードゲーマーには二種類いる。僕は圧倒的に後者であった。
 構成するその一枚一枚に役割を割り振り、実際の決闘においての流れまで想定した設計図。設計した通りに動くデッキを見るのが好きなのだ。何度回しても綺麗に回るようなデッキが。その為にカードゲームをやっていると言っても過言ではない。その為の最後の一枚。
 
 リストが埋まらない限り、デッキは永遠に完成しない。そもそもデッキとはなんだったか・・・
 
 
 
 
 
 再開。
 早速4枚目の《異次元グランド》を目にした所で意識が遠のきはじめる。その後誤ってビッカメでヨドバシのポイントカードを出し、同時に在庫が消滅。本日の捜索を断念。
 
 
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 
 -RESULT-
  目標:《フォーミュラ・シンクロン》
  予算:無制限(今回は想定外のチキンレースだったため設定せず)
  結果:終了条件2−店の在庫がなくなる を満たし終了。
 
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 
 当日のツイッター
 
 後日談。
 オフハウスにて約13k分全部売ったら1.3kに錬金できた(明細)。50円で買い取ってもらったディルグは後日63円で店頭に並び、僕はその隣のディスプレイに鎮座していた《フォーミュラ・シンクロン》を購入し、このチキンレースは幕を閉じた。